中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

幕末明治の浮世絵百年 大江戸の賑わい

展覧会の詳細

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 庶民文化が発展した江戸時代末期から、文明開化で華やぐ明治時代前期まで約100年。浮世絵は、最新の流行や時事を伝える大衆メディアとして激動の世相を映し出しました。
 江戸庶民の息抜きとなった、娯楽の発展に一役買ったのも浮世絵です。葛飾北斎や歌川広重の風景画に描かれた行楽地や名所、宿場町は、庶民の旅情をかき立てました。一方、歌川国貞(後の三代豊国)や歌川国芳は、役者絵、武者絵、相撲絵、美人画における巧みな人物描写で名をはせました。江戸っ子たちは、絵師の洒落っ気が込められた戯画に笑いながら浮世を謳歌します。
 開国で異文化が流入すると、浮世絵の画中には鉄道や馬車、人力車が行き交い、洋装の人々が闊歩します。幕末から活躍する月岡芳年は、武者絵や美人画から開化絵まで幅広いジャンルで筆をふるいました。明治から画業を開始した小林清親は、西洋の風景表現を取り入れた光線画で評判となります。美人画を得意とする揚州周延は、欧化政策の象徴となった鹿鳴館のきらびやかな世界を描き出しました。
 時代の変化に伴い、新しもの好きな庶民の関心事は瞬きする間もなく移り変わりました。時流に敏感な版元の発想、表現力豊かな絵師の筆遣い、彫師や摺師の卓越した技巧によって生み出された優品は、力強く躍動する大江戸の活況を今に伝えてくれます。絵師もジャンルもバラエティ豊かににぎわう幕末明治の浮世絵をお楽しみください。


会 期
2023年4月6日(木曜日)から6月18日(日曜日)
 【前期】4月6日(木曜日)から5月7日(日曜日)
 【後期】5月11日(木曜日)から6月18日(日曜日)
休館日:毎週月曜日(5月1日を除く)、展示替え期間(5月8~10日)
※全・後期で全点展示替えいたします。
場 所
展示室1・2(1・2階)
開館時間 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料 大人820円(660円) ※(  )内は20名以上の団体料金
▲18歳以下無料
▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料
▲リピーター割…本展会期中に限り、同展半券提示で2回目以降は660円で観覧できます。
▲毎週水曜日はフリーウエンズデー(観覧無料)
▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料)
関連イベント 学芸員による作品ガイド
【前期】4月16日(日曜日) 【後期】5月21日(日曜日)
各日午前10時30分から40分程度(予定)
監 修 中右 瑛(国際浮世絵学会常任理事)
企画協力 E.M.I.ネットワーク


今月の陳列棚

春季特別企画展「幕末明治の浮世絵百年 大江戸の賑わい」より

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月岡芳年「風俗三十二相 遊歩がしたさう」

錦絵大判 明治21年(1888) 中右コレクション 前期出品(4/6~5/7)

 「風俗三十二相」は、幕末から明治にかけて活躍した月岡芳年による美人画シリーズです。「~さう(そう)」という題名で、さまざまな年齢、階層の女性の様相を描き分けています。本図の副題には「明治年間妻君之風俗」とあり、明治時代の既婚女性を取り上げています。文明開化を象徴する洋装は、優雅に咲く花菖蒲に引けを取らず華やかです。うれしそうに洋傘を携えており、これから散歩へ出かけるところでしょうか。当時、女性の洋装化は上級階級のごく一部に留まっていましたが、浮世絵に描かれることで一般庶民も目にすることができました。