中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

コレクション

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館内のコレクション展示1

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館内のコレクション展示2

 浮世絵版画は熱や光に弱いため、常設展示を行うことはできません。そのため、当館では田中コレクション、吉村コレクションなど約1,500点の所蔵品を中心に、年間を通じて企画展または特別企画展を開催しています。
 なお、当館の誇る田中コレクション「木曽海道六拾九次之内」については毎年9月頃、約1ヵ月間展示する機会を設けています。また、当館2階廊下には高精細印刷による複製画を常設展示しておりますので、何とぞご理解いただきますようお願いいたします。展覧会日程の詳細につきましては、年間スケジュールをご確認ください。


田中コレクションについて

 田中コレクションは、恵那市の実業家・田中春雄氏(1919〜2012)が“木曽街道(中山道)”と“歌川広重”をテーマに、約30年の歳月をかけて収集した浮世絵のコレクションです。
 田中氏は、出身の三重県四日市市から恵那市に移り事業を成功させ、中山道沿いに居を構えられました。家の前を通る中山道に興味を持つうちに、広重が中山道を描いた「木曽海道六拾九次之内」と出合いました。その時に経験した言葉にならないほど感動が、浮世絵収集のきっかけとなったそうです。
 やがて田中氏は「収集した浮世絵はただ自分一人だけのものではない、自分をここまで育ててくれた恵那の地に恩返しをしたい」という思いを強く持つようになります。そして中心市街地活性化の中心となる施設を整備したいという恵那市の意向を知り、平成12年(2000)2月、500点余のコレクションを恵那市に寄贈することを決断されました 。
 コレクションは、世界的に見てもレベルの高い揃物と評される「木曽海道六拾九次之内」をはじめ、「東海道五十三次之内(行書東海道)」「京都名所之内」「浪花名所図会」など質の高い広重の風景画が中心です。さらに名品「魚づくし」や、広重と共に幕末の浮世絵界を彩った歌川国芳による「木曽街道六十九次之内」、中山道について記した版本類なども含まれます。
 当館所蔵作品の中核を成す田中コレクションは、恵那市の宝であるだけでなく、後世に引き継ぐべき文化遺産です。


「木曽海道六拾九次之内」について

 「木曽海道六拾九次之内」は、二人の絵師の手による作品で構成されています。渓斎英泉(寛政2~嘉永元年/1791-1848)と歌川広重(寛政9~安政5年/1797-1858)、共に江戸後期に活躍した浮世絵師です。この揃物は木曽街道(中山道の異称)をテーマとしており、69の宿場に旅の起点である日本橋を加えた70ヵ所を描いています。このうち、中津川を描いた作品は、雨の景と晴天の景という全く異なる図柄の2図が存在しているため、全体は71図となります。雨の景を描いた図は“雨の中津川”と通称されており、現存数が世界で十数点と極めて少なく、当館コレクションの中でも特に貴重な一品です。
 当初、このシリーズの刊行に着手したのは保永堂(竹内孫八)でした。保永堂は「木曽海道六拾九次之内」に先駆けること数年、広重の名を広く人口に膾炙せしめた「東海道五拾三次之内」を出版した版元です。シリーズの途中からは錦樹堂(伊勢屋利兵衛)が携わるようになり、保永堂との合版を経て錦樹堂の単独出版になりました。さらに、シリーズの完結後、版権は錦橋堂(山田屋庄次郎)へと移りました。
 複雑な版元の移行、そして絵師の交代を経て出版され続けた「木曽海道六拾九次之内」ですが、こうした経緯の背景に、版元と絵師のどのような事情があったのか詳らかではありません。しかし、中山道の旅路から眺める景色は穏やかな情趣に満ち、江戸後期に数多く出版された風景画の中でも優れた作品の一つであるといえるでしょう。

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歌川広重「木曽海道六拾九次之内 洗馬」

歌川広重「木曽海道六拾九次之内 中津川(雨)」


吉村コレクションについて

 恵那市内の旧家に生まれ、名古屋市の眼科医の元に嫁いだ吉村トシ子氏(1920~2001)は、美術に造詣が深く、夫の故・吉村善郎氏と共に、多くの美術品を収集されていました。
 吉村氏は2000年10月、故郷・恵那に美術館が建設されることを知り、「文化、芸術は人の心を豊かにし、豊かな心から文化、芸術が生まれる。優れた芸術作品は、人類共有の宝」という思いから、自らの愛した美術品を郷里の美術館へ寄贈するという意向を持つようになり、翌年、美術館の開館を前に、美術品全46点と美術品購入のための多額の資金を恵那市に寄贈されました。
 吉村氏から寄贈された作品は、鏑木清方や伊藤深水の日本画、荻須高徳、ルオー、マリー・ローランサンの洋画、ガレ、ドームのガラス工芸、加藤唐九郎や浜田庄司の茶陶等多岐に渡ります。また、寄贈された資金で購入した歌川広重の浮世絵作品と合わせ、これらを「吉村コレクション」と呼び、当館の貴重な作品資料として展示しています。

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荻須高徳「赤い壁の家」

エミール・ガレ「草花文ランプ」