中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

北斎百様

展覧会の詳細

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 約70年にも及ぶ北斎の長い画業は、大きく6期に分けて考えることができます。勝川派の絵師として修業をした「春朗期」、琳派の流れをくむ一門で独自の画風を確立した「宗理期」、特に読本挿絵の分野で活躍した「北斎期」、絵手本の制作に傾注した「戴斗期」、数多くの錦絵の傑作を生み出した「為一期」、そして最晩年の「画狂老人卍期」。現在最もよく知られる「葛飾北斎」という画号は文化2年(1805)頃から用いられ始めました。
 さて、北斎と広重はいずれも風景画を得意とした絵師として知られています。しかし北斎が「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」などの錦絵風景画を手掛けたのは、天保元年から4年(1830-33)を中心としたわずかな期間しかありません。一方広重は、ほぼ時を同じくして「東都名所」(通称・一幽斎がき東都名所)や「東海道五拾三次之内」(通称・保永堂版)を発表。名所絵の名手としてその地位を確立していきます。「冨嶽三十六景」の大ヒットによって錦絵の世界に風景画という新たなジャンルを切り開いた北斎は、広重にも多大な影響を与えたのです。
 本展では、北斎が手掛けた錦絵や摺物、版本といった木版作品を中心にその画業を振り返ります。また、北斎と広重、それぞれの手になる同画題の作品を比較展示することで、両者の違いや共通点を探っていきます。
 絵を描くことに人生を捧げ、日本のみならず世界中の人々を引き付けてやまない北斎の魅力をご紹介します。


会 期
2022年3月31日(木曜日)から6月19日(日曜日)
 【前期】3月31日(木曜日)から5月8日(日曜日)
 【後期】5月12日(木曜日)から6月19日(日曜日)
休館日:毎週月曜日(ただし5月2日は除く)、祝翌日(5月6日)、5月10日・11日
場 所
展示室1・2(1階・2階)
開館時間 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料 大人820円(660円) ※(  )内は20名以上の団体料金
▲18歳以下無料
▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料
▲毎週水曜日はフリーウェンズデー(観覧無料)
▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料)
関連イベント 学芸員による作品ガイド
【前期】4月3日(日曜日) 【後期】5月22日(日曜日)
各日午前10時30分から40分程度(予定)


今月の陳列棚

春季企画展「北斎百様」より

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葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

大判錦絵 天保元~4年(1830-33)頃 個人蔵

 世界で最もよく知られている日本絵画ともいわれる本図。神奈川沖とは相模湾のことではなく、当時の神奈川湊、現在の神奈川県横浜市神奈川区にあった湊(港)を指しています。荒々しい大波と、波に飲まれる3艘の推送舟。遠くに見える富士山は、波頭に紛れてしまいそうなほど、ひっそりとしたたたずまいで描かれています。また、画面左手前で立ち上がる小ぶりな波と相似形を成しているにも見えます。