中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

過去の展覧会 2022年度

Past Exhibitions FY2022

春季特別企画展「北斎百様」

前期:2022年3月31日(木)~5月8日(日)
後期:2022年5月12日(木)~6月19日(日)

 約70年にも及ぶ北斎の長い画業は、大きく6期に分けて考えることができます。勝川派の絵師として修業をした「春朗期」、琳派の流れをくむ一門で独自の画風を確立した「宗理期」、特に読本挿絵の分野で活躍した「北斎期」、絵手本の制作に傾注した「戴斗期」、数多くの錦絵の傑作を生み出した「為一期」、そして最晩年の「画狂老人卍期」。現在最もよく知られる「葛飾北斎」という画号は文化2年(1805)頃から用いられ始めました。
 さて、北斎と広重はいずれも風景画を得意とした絵師として知られています。しかし北斎が「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」などの錦絵風景画を手掛けたのは、天保元年から4年(1830-33)を中心としたわずかな期間しかありません。一方広重は、ほぼ時を同じくして「東都名所」(通称・一幽斎がき東都名所)や「東海道五拾三次之内」(通称・保永堂版)を発表。名所絵の名手としてその地位を確立していきます。「冨嶽三十六景」の大ヒットによって錦絵の世界に風景画という新たなジャンルを切り開いた北斎は、広重にも多大な影響を与えたのです。
 本展では、北斎が手掛けた錦絵や摺物、版本といった木版作品を中心にその画業を振り返ります。また、北斎と広重、それぞれの手になる同画題の作品を比較展示することで、両者の違いや共通点を探っていきます。
 絵を描くことに人生を捧げ、日本のみならず世界中の人々を引き付けてやまない北斎の魅力をご紹介します。

ポスター画像

企画展「浮世絵DESIGN」

2022年6月23日(木)~7月24日(日)

 粋で新しいもの好きな江戸っ子たち。庶民を中心に流通した浮世絵にも、彼らの関心を引き付ける斬新なアイデアが求められました。名所のように繰り返し描かれた画題であっても、アングルを変えたり、人物画と組み合わせたり、一つの画面に複数図をレイアウトしたりと、形式や構成に一ひねりを加えることで、オリジナリティのある目新しい作品へと昇華させたのです。
 また、浮世絵のシリーズ物は、完結後、画帖形式にまとめられて販売されることもありました。画帖に収める画題目録を手掛けたのは、梅素亭玄魚といった意匠家たち。各画題の文字表記を中心とした図案は、作品情報を伝えるだけでなく、人々の目を大いに楽しませました。
 こうした、庶民の購買意欲をかき立てる作品には、絵師たちの細部にわたる創意工夫の跡が認められます。思わず手に取りたくなるような、デザイン性豊かな浮世絵の世界をお楽しみください。

ポスター画像

企画展「人だらけ-街の雑踏を見る-」

2022年7月28日(木)~8月28日(日)

 何気なく目にした雑誌やSNSの写真を見て、「そこに行ってみたい」と思ったことが誰しも一度はあると思います。美しい自然の景色や美味しそうな料理など、旅情を誘う要素はいくつもありますが、多くの人でにぎわう風景もその要素の一つといえます。何が食べられるかよくわからないけれど、人がずらりと並んでいると食べたくなる。どんな場所かよくわからないけれど、多くの人が集まっていると行きたくなる気持ち。
 名所絵や街道絵には、時として江戸の人々のそういった気持ちや好奇心をくすぐるようなにぎわいが描き込まれました。市場でひしめき合いながら取引を行う商人たち、参道を押し合いへし合いしながら行き交う参拝客などは、街の活況を伝えています。
 本展では、100万都市とうたわれた江戸をはじめ、京都や大坂を中心とする上方や地方都市を舞台に人々が集まり、生き生きと商い、そして暮らす様子をご紹介します。また、宿場町の盛況ぶりや雨宿りなど、旅先での偶発的な出会いにもクローズアップします。

ポスター画像

特別展観「木曽海道六拾九次之内」

2022年9月1日(木)~10月2日(日)

 「東海道五拾三次之内」(保永堂版)の成功を受けた版元・竹内孫八は、東海道と並ぶ基幹街道である中山道をテーマとした「木曽海道六拾九次之内」を企画しました。渓斎英泉と歌川広重、二人の絵師の手になる本揃物は、全70図(ただし「中津川」は絵柄の異なる2種類が確認されているので、全体では71図が存在)のうち英泉が24図を、広重が46図を担当しました。天保6年(1835)頃から刊行が始まり、絵師の交代や版元の交代などの紆余曲折を経て、天保9年(1838)頃に完結したと考えられています。
 風光明媚な東海道とは異なり山がちな中山道を、英泉や広重はさまざまな季節、天候、時間の中で情感豊かに描き出しました。本展では、当館の誇る「田中コレクション」をはじめ、美しき中山道を描いた作品をご紹介します。

ポスター画像

秋季特別企画展「東海道をゆく」

前期:2022年10月6日(木)~11月6日(日)
後期:2022年11月10日(木)~12月11日(日)

 慶長6年(1601)に導入された宿駅伝馬制により、江戸と京を結ぶ東海道には53の宿場が整備されました。庶民の間で旅行への関心が高まると、東海道と中山道を取り上げた道中記『東海木曽両道中懐宝図鑑』や、旅の必需品や心得を著した手引書『旅行用心集』など、旅や地方を題材とした書籍が相次いで出版されます。風光明媚な名所を多数擁する東海道は、浮世絵においても人気の題材でした。東海道物を最も得意とした浮世絵師は、歌川広重でしょう。代表作「東海道五拾三次之内」(保永堂版)をはじめ、生涯にわたり20種類以上もの作品を手掛けました。
 本展では、「保永堂版」を中心とする6種の東海道シリーズから出品し、各宿場や道中を主題とする浮世絵を、当時の旅程になぞらえてご紹介します。災害や病気を退け、幸運を招くとして『旅行用心集』にも登場する神獣・ハクタクと共に、13泊14日の旅に出かけましょう。

#

企画展「ウーマンズ ライフスタイル」

2022年12月15日(木)~2023年1月22日(日)

 浮世絵には「美人画」に代表されるように、太夫や有名茶屋の娘など艶やかな女性たちが数多く描かれましたが、市井の女性たちもまた登場します。江戸時代は、現代よりも顕著な男性優位の考えや厳しい身分制度のある時代でした。しかし、女性たちは、時に子育てと並行しながら男性顔負けの力仕事をしたり、時に根気と丁寧さが求められる細やかな手仕事をしたりと、日常をたくましく生きていました。また、江戸時代中期以降は庶民による遊興の旅も可能となったことから、名所絵や街道絵には旅を楽しむ女性の姿も描かれています。本展では、浮世絵を通して名もなき女性たちが日常を紡ぐ姿を垣間見ます。

#

企画展「花は桜木-江戸っ子お花見事情-」

2023年1月26日(木)~2月26日(日)

 日本の春の風物詩、お花見。その起源は奈良時代とされていますが、当時は中国から伝来した梅の観賞が主流でした。国風文化が栄えた平安時代から、花見の「花」といえば日本古来の桜を指すようになります。桜の咲き散る姿を愛で、時には宴会を催す花見の文化は、畿内から地方、貴族から武士へと広まり、江戸時代には庶民にまで普及しました。江戸における花見ブームの仕掛け人は、8代将軍・徳川吉宗です。政策の一環で江戸の各地に植樹された桜木は、詩歌や地誌、浮世絵などに取り上げられ話題を集めると、春には大勢の花見客でにぎわう桜の名所に。江戸っ子たちはごちそうを重箱に詰め、晴れ着に身を包んで出かけていきました。
 本展では、浮世絵師・歌川広重による名所絵や版本『絵本江戸土産』から、江戸庶民の行楽地として人気を博したお花見スポットをご紹介します。来る春を待ちながら、一足早いお花見をお楽しみください。

#

企画展「江戸粋戯場伊呂波(えどのいき かぶきのいろは)」

2023年3月2日(木)~4月2日(日)

 江戸時代、浮世絵の主な画題といえば美人と役者、そして名所。中でも人気の歌舞伎役者が描かれた役者絵は、いわゆるブロマイドの役割を果たし、庶民の間でもてはやされました。元禄期(1688-1704)以降、浮世絵において美人画と並ぶ一大ジャンルとなった役者絵ですが、当初は類型化された表現が用いられ、役者一人一人が描き分けられることはほとんどありませんでした。しかし、明和年間(1764-72)に勝川春章(1726-92)、一筆斎文調(生没年不詳)という二人の絵師が役者の面貌を「似顔」で描くことを始め、また春章の弟子・勝川春好(1743-1812)は「役者大首絵」で役者絵の様式に新風をもたらしました。さらに、幕末の浮世絵界を席巻した歌川派の絵師たちは、似顔を基本としつつ理想的に美化された役者の姿を華やかに描き出し、多くの人々の心を掴みました。
 本展では、当館所蔵の三代歌川豊国作品を中心に出陳し、皆さんもよくご存じの大名跡やおなじみの物語など、時代を越えて愛される歌舞伎の世界を分かりやすくご紹介します。

#