中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

過去の展覧会 2021年度

Past Exhibitions FY2021

春季特別企画展「ゆる旅おじさん図譜リターンズ」

前期:2021年4月1日(木)~5月9日(日)
後期:2021年5月13日(木)~6月13日(日)

 2017年度に開催した「ゆる旅おじさん図譜」が特別企画展として帰ってきました!
 《東海道五拾三次之内》(通称・保永堂版)の大ヒット以降、風景画の名手として一躍人気絵師の仲間入りを果たした歌川広重。その画風はしばしば「情緒的」あるいは「情趣に富む」などと評されますが、彼の作品を注意深く鑑賞していると、そこに描かれたたくさんの名もなき人々――「おじさん」の存在に気付くでしょう。表情豊かにいきいきと表された旅人やその土地々々に暮らす地元住民など、広重画における人物たちは、作品をより一層味わい深いものへと導いてくれる陰の立て役者なのです。
 当館は、今年で開館20年目を迎えます。「中山道」と「広重」を二大テーマとして作品の蒐集・展示を行ってきた当館ならではの展覧会で、従来とは一味違う広重作品の楽しみ方をご紹介します。

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企画展「諸国山巡り-山海見立相撲お披露目-」

2021年6月17日(木)~7月18日(日)

 日本の国土の多くは、山地や丘陵地といった地形で占められています。険しい地形は、その土地に住む人々や街道を行く旅人たちを苦しめるものであった一方、豊富な水源を生み出し、温泉や豊かな山の幸など、人々に恵みを与えてくれるものでもありました。また、信仰の対象として、富士山をはじめとした霊峰が全国各地で崇められました。広重は、特徴ある山容や四季折々に見せる山の表情を叙情性豊かに捉え、山の美しさや厳しさを描き出しています。
 本展では、街道絵や名所絵に描き込まれた全国各地の名もない山から名山まで多様な山を巡ります。また、新規収蔵となった広重最晩年の優品《山海見立相撲》6点も初公開します。広重の手によって表された山の風景をご堪能ください。

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企画展「華の都 江戸-名所江戸百景名品選-」

2021年7月22日(木・祝)~8月22日(日)

 「名所江戸百景」は、初代広重の手になる118図に図案家・梅素亭玄魚の目録、そして二代広重の落款のある1図を合わせた計120図の、広重畢生の大作です。タイトルが「百景」となっているのは、当初は百図で完結するはずだったものが、売れ行き好調につき予定を超えて制作を続けることになったから、と一般的には考えられています。
 一般的に江戸名所絵は、仕事や観光で江戸を訪れた人々にとって土産物の役割を果たしたといわれています。しかし、「名所江戸百景」の中には、一般的に江戸の名所とはいえないような場所を描いた作品がいくつもあります。これらの場所は、広重と同じく江戸に暮らす人々が楽しみ、共感することのできる「隠れた名所」でした。「名所江戸百景」は、江戸っ子のための江戸名所絵と見ることもできるのです。
 本展では、生粋の江戸っ子絵師・広重描く華やかなりし江戸名所の数々を、四季折々の風景と共に見ていきます。

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開館20周年記念秋季特別企画展「浮世絵木曽街道三種揃踏」

前期:2021年8月26日(木)~9月26日(日)
   2021年10月1日(金)~10月31日(日
中期:2021年9月30日(木)~10月31日(日)
   2021年11月3日(水・祝)~12月5日(日)
後期:2021年11月3日(水・祝)~12月5日(日)
   2021年12月9日(木)~2022年1月16日(日)
※岐阜県下における緊急事態宣言の発令により、8月23日(木曜日)から9月30日(金)の期間中、臨時休館いたしました。

 浮世絵の黄金期といわれる時代を経た後の19世紀は、葛飾北斎や菊川英山、渓斎英泉など個性豊かな絵師たちが活躍した、いわば浮世絵熟爛の時代です。しかし、当時の画壇を席巻したのは、歌川豊春を祖とする歌川派の絵師たちでした。
 常に新しいもの、面白いものを追求し、公権力に対する反骨精神を忘れなかった国芳。自然や人々の営みに寄り添い、風景画や花鳥画を浮世絵の一大ジャンルとして確立させた広重。人々の興味関心に対して常にアンテナを張り、江戸っ子に喜ばれる作品を生み出し続けた三代豊国。江戸時代後期の浮世絵界をけん引した彼らは、同じ流派に属する同志であり、人気を争うライバルでもありました。
 さて、当時「豊国にかほ(似顔) 国芳むしや(武者) 広重めいしよ(名所)」とうたわれた3人は、それぞれの得意分野で木曽街道(中山道)をテーマとした揃物を手掛けています。当館では2018年に三代豊国「木曽六十九駅」を新規収蔵。広重・英泉「木曽海道六拾九次之内」、国芳「木曽街道六十九次之内」と合わせ、3種の木曽街道シリーズが揃いました。
 2021年9月、中山道広重美術館は開館20周年を迎えます。今年の秋は「中山道」を冠する当館で、歌川派の人気絵師3人の手になる木曽街道作品の豪華揃い踏みをぜひお楽しみください。

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企画展「広重円熟期の画業」

2022年1月20日(木)~2月20日(日)

 天保4年 (1833)頃の出世作「東海道五拾三次之内」(通称「保永堂版」)で一躍有名となった歌川広重は、その後も名所絵や街道絵などの風景画だけでなく、美人画、張交絵、戯画、絵本など、幅広い画域で筆を振るいました。本展では、広重が円熟期を迎えた嘉永年間(1848-54)の作品を中心にご紹介いたします。
 嘉永年間は、天保の改革に伴う出版統制が緩和され始めた時期でした。株仲間が再結成されると、版元らによる大規模な揃物の出版が相次ぎます。そうした浮世絵出版再興隆の時勢も相まって、この頃の広重は精力的に活動し、数多くの作品を手掛けました。嘉永6年(1853)には、『江戸寿那古細撰記』の浮世絵師番付に「豊国にかほ(似顔) 国芳むしや(武者) 広重めいしよ(名所)」と評され、三代豊国や国芳に次いで3番目に位置しています。人気絵師として老成した円熟期ならではの趣のある、軽妙な筆遣いや構図の妙をお楽しみください。

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企画展「はるかかなたを思い描く-六十余州名所図会から-」

2022年2月23日(水・祝)~3月27日(日)

 生涯にわたり日本全国の名所を描いた広重。しかし広重は必ずしも現地に出向いて実景を写したわけではなく、名所地誌や読本などの版本類、あるいは他の絵師たちの名所絵を参照しながら錦絵制作に取り組みました。
 本展でご紹介する「六十余州名所図会」は、五畿七道、68カ国の名所を描いた広重晩年の大作ですが、シリーズ中の多くで『山水奇観』(寛政11年/1799、享和2年/1802)の図版を参考にしていることが既に指摘されています。『山水奇観』は、備前国児島郡上山坂村(現・岡山県玉野市)に生まれ、上方で活躍した絵師・淵上旭江が実際に諸国を巡り画稿を描きため刊行した風景絵本です。この他にも『厳島図会』や『尾張名所図会』などの名所地誌、『北斎漫画』のような絵手本など、さまざまな作品から材を取っています。
 では、広重は先行作品からどのようにして情報を抽出して、実際には見ていない場所の絵を生み出したのでしょうか。広重が思い描いた名所風景をお楽しみください。

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