中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

広重翁―晩年の画業と「写真(しょううつし)」

展覧会の詳細

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 江戸時代後期を代表する浮世絵風景画の名手、歌川広重(1797-1858)。50代を迎えた嘉永年間(1848-54)に手掛けた絵手本『絵本手引草 初編』では、自序として「画は物のかたちを本とすなれば写真(しょううつし)をなして是に筆意を加ふる時は則(すなわち)画なり」と説いています。ここからは、対象の真を写し取る「写真」を基本とし、そこへ運筆の趣「筆意」を加えることで独自の画風に昇華していたことが分かります。広重は、自身のスケッチや先行作品の図柄をそのまま引用するのではなく、多彩な筆致や構図を大小さまざまな判型に合わせて駆使し、表現意図に即した景観へ再構成したのです。
 本展では、嘉永元年(1848)から数え62歳で没する安政5年(1858)までの約10年間を中心に、6冊の絵手本や「名所江戸百景」をはじめとする晩年の代表作を通して広重の作画姿勢に迫ります。風景画の第一人者として年功を積んだ広重翁による、老成円熟した筆遣いや画面構成の妙趣をお楽しみください。


会 期
2023年10月5日(木曜日)から12月10日(日曜日)
 【前期】10月5日(木曜日)から11月5日(日曜日)
 【後期】11月9日(木曜日)から12月10日(日曜日)
休館日:毎週月曜日(ただし10月9日(月・祝)は開館)、
    祝日の翌日(10月10日(火)、11月24日(金))、
    展示替え期間(11月6~8日(月~水))
場 所
展示室1・2(1・2階)
開館時間 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料 一般820円(660円) ※(  )内は20名以上の団体料金
▲18歳以下無料
▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料
▲毎週水曜日はフリーウエンズデー(観覧無料)
▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料)
関連イベント ■学芸員による作品ガイド
 【前期】10月15日(日曜日) 【後期】11月19日(日曜日)
 各日午前10時30分から40分程度(予定)
■解説ボランティア幽遊会による作品ガイド
 日時:随時(要事前予約)


今月の陳列棚

秋季特別企画展「広重翁―晩年の画業と「写真(しょううつし)」」より

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歌川広重「武陽金沢八勝夜景」

大判錦絵三枚続 安政4年(1857)7月
当館蔵(令和4年度新規収蔵品)※前期出品(10/5~11/5)

 雪景色の「木曽路之山川」、渦潮を花に見立てた「阿波鳴門之風景」と共に「雪月花」と総称される三部作の一つ。本図は「月」に当たります。三枚続の大画面に広がるのは、能見堂から金沢(現・神奈川県横浜市金沢区)の景勝地を望む見晴らし。画面下部から七曲がりに延びる砂州が、平潟湾に浮かぶ小高い野島上の満月へと視線を誘導します。広重は嘉永4年(1851)5~6月頃とされる箱根旅行の際に同地へ足を運び、スケッチを行っています。時節を秋夜に変えた本図では、墨と藍を主とする落ち着いた色調により、雁影が舞う幽玄な月景を表現しました。なお、本図は令和4年度に新規収蔵した作品の一つであり、本展が初出品となります。