展覧会の詳細

渓斎英泉(1791-1848)と歌川広重(1797-1858)による「木曽海道六拾九次之内」は、起点・日本橋と木曽街道(中山道の異称)の69宿を主題とする街道絵シリーズです。名所絵や街道絵などの風景画が浮世絵の一ジャンルとして発展した天保年間(1830-44)に制作され、長きにわたり出版され続けました。そのため、本シリーズの各図には、増し摺りに伴う複数のバリエーションや異版(変わり図)が存在します。恵那市の浮世絵収集家・田中春雄氏(1919-2012)が約30年の歳月をかけて収集した「木曽海道六拾九次之内」は121点に及び、豊富な“摺り違い”が特徴です。
本展では、田中コレクション「木曽海道六拾九次之内」から78点出品し、摺り違いの比較展示を行うほか、新規収蔵品5点をお披露目いたします。2人の絵師による中山道の叙情豊かな自然描写と共に、本物の実見でしか味わえない浮世絵木版画の技巧をお楽しみください。
【お詫びと訂正】本展チラシ裏面の展覧会概要文に一部誤りがございました。
(誤)「木曽海道六拾九之内」→(正)「木曽海道六拾九次之内」
訂正してお詫び申し上げます。正しい内容はこちら
会 期 | 2023年8月31日(木曜日)から10月1日(日曜日) 休館日:毎週月曜日(ただし9月18日(月・祝)は開館)、9月19日(火) |
場 所 | 展示室1・2(1・2階) |
開館時間 | 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで) |
観覧料 | 大人820円(660円) ※( )内は20名以上の団体料金 ▲18歳以下無料 ▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料 ▲毎週水曜日はフリーウエンズデー(観覧無料) ▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料) |
関連イベント | □木曽海道“おじさん”探しクイズ 作中の登場人物をワークシートで出題。 全問正解の方には当館オリジナル「広重おじさんカード」をプレゼント! 日時:随時 場所:展示室1・2(1・2階) □学芸員による作品ガイド 日時:9月3日(日)、24日(日) 各日午前10時30分~(40分程度) 場所:展示室1・2(1・2階) □解説ボランティア幽遊会による作品ガイド 日時:随時(要事前予約) |
今月の陳列棚
特別展観「木曽海道六拾九次之内」より


歌川広重「木曽海道六拾九次之内 武佐」
大判錦絵 天保8~9年(1837ー38)頃 当館蔵
上:令和4年度新規収蔵品 下:田中コレクション
中山道広重美術館は、初摺(初版)だけでなく後摺(第2版以降)や異版の図もそろえたいという田中氏の遺志を受け継ぎ、「木曽海道六拾九次之内」の収集を続けています。本展では、令和4年度に新規収蔵した「武佐」(上図)を初めてご覧いただきます。
武佐宿(現・滋賀県近江八幡市)の西を流れる川の舟橋を渡っていく旅人たち。手前岸に配された木の幹が、画面の左右を両断するような構図です。両図は同じ図柄の作品ですが、摺られた時期が異なります。このうち、上図がより早期の出版で、絵師・広重の表現意図を忠実に反映していると考えられています。川の両岸から藍のぼかし摺(グラデーション)を施しつつ、中央は白く残すことで紙の地色を生かしています。淡い色使いにより、葦が生い茂る川辺の情景を爽やかな印象に仕上げた1枚です。一方、下図は藍一色の川面の上からぼかし摺を重ねており、迫り来る夕闇の気配を感じさせるような深い色使いとなっています。皆さまは、どちらの摺りがお好みでしょうか。