中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

はるかかなたを思い描く-六十余州名所図会から-

展覧会の詳細

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 生涯にわたり日本全国の名所を描いた広重。しかし広重は必ずしも現地に出向いて実景を写したわけではなく、名所地誌や読本などの版本類、あるいは他の絵師たちの名所絵を参照しながら錦絵制作に取り組みました。
 本展でご紹介する「六十余州名所図会」は、五畿七道、68カ国の名所を描いた広重晩年の大作ですが、シリーズ中の多くで『山水奇観』(寛政11年/1799、享和2年/1802)の図版を参考にしていることが既に指摘されています。『山水奇観』は、備前国児島郡上山坂村(現・岡山県玉野市)に生まれ、上方で活躍した絵師・淵上旭江が実際に諸国を巡り画稿を描きため刊行した風景絵本です。この他にも『厳島図会』や『尾張名所図会』などの名所地誌、『北斎漫画』のような絵手本など、さまざまな作品から材を取っています。
 では、広重は先行作品からどのようにして情報を抽出して、実際には見ていない場所の絵を生み出したのでしょうか。広重が思い描いた名所風景をお楽しみください。


会 期
2022年2月23日(水曜・祝日)から3月27日(日曜日)
休館日:毎週月曜日(ただし3月27日は除く)、祝翌日(2月24日、3月22日)
場 所
展示室1(1階)
開館時間 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料 大人520円(420円) ※(  )内は20名以上の団体料金
▲18歳以下無料
▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料
▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料)
関連イベント 学芸員による作品ガイド
3月13日(日曜日)
午前10時30分から30分程度(予定)


今月の陳列棚

企画展「はるかかなたを思い描く-六十余州名所図会から-」より

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歌川広重「六十余州名所図会 能登 滝之浦」

大判錦絵 嘉永6年(1853)9月 当館蔵(吉村コレクション)

 現在の石川県羽咋郡志賀町に位置する能登金剛の中でも、特に有名な景勝地である巌門付近が描かれています。本図は『山水奇観 続編 北陸奇勝』「能登 滝浦」を参考にしたとされます。広重は、せり出した巌門と付近を流れる不動滝を同一画面上に収めるため、『山水奇観』より視点を右にずらし、両者を見上げるような構図としました。また、リズムよく配された桜樹が、険しい景観の中に春の華やかさを添えています。