展覧会の詳細
本展でご覧いただく《五十三次名所図会》は、安政2年(1855)に刊行された通称「竪絵東海道」といわれる55枚のシリーズです。広重が手掛けた大部の東海道の揃物の中で唯一画面を縦に使った作品で、俯瞰的な構図を多く用いています。また、故事や伝承なども画題として取り入れ、鑑賞者を飽きさせない工夫も見られます。本揃物は、まさに日本各地の名所旧跡を紹介した「名所図会」を思わせるシリーズです。
広重は晩年、《六十余州名所図会》や《名所江戸百景》など、画面を縦に使った風景画を多く制作しました。一般的に、縦長の画面は風景画には不向きとされています。しかし広重は、縦構図の水平画角の狭さという弱点を、俯瞰構図や近像型構図(手前のモティーフを大きく描き、遠景を見通す構図)を用いて見事にカバーしました。年を重ねてなお新しい表現を模索した、広重晩年の大作をご覧ください。
会期 | 2021年1月21日(木曜日)から2月23日(火・祝日) 休館日:毎週月曜日、2月12日(金曜日) |
場所 | 展示室1(1階) |
開館時間 | 午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで) |
観覧料 | 大人520円(420円) ※( )内は20名以上の団体料金 ▲18歳以下無料 ▲障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料 ▲毎週金曜日はフリーフライデー(観覧無料) |
関連イベント | 学芸員による作品ガイド 日時:2月7日(日曜日)午前10時30分~(30分程度) 場所:展示室1(1階) |
企画展「五十三次名所図会」より
今月の陳列棚

歌川広重《五十三次名所図会》
「十七 由井 薩多嶺親知らす」
大判錦絵 安政2年(1855)7月 当館蔵
左手には急峻な崖、右手には大海が広がり、馬が一騎通るのもやっとという薩埵峠。後ろを顧みる余裕もないほどの緊張を強いられた道のりは、「親知らず子知らず」と呼ばれた難所でした。山肌には陰影が丁寧に施され、木々が細かく描き込まれています。黄でつぶされた空にうっすらと引かれた朱のぼかしが、彫師、摺師の繊細な手仕事を今に伝えます。