中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川国芳 「木曽街道六十九次之内 大井斧定九郎」

歌川国芳「木曽街道六十九次之内 大井斧定九郎」

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歌川国芳
「木曽街道六十九次之内 大井斧定九郎」
嘉永5年(1852) T.C

作品解説

幕末の奇才、歌川国芳による揃物で、目録を含めた竪大判72枚で構成されています。画中には中山道(木曽街道)の宿場風景がコマ絵で示され、それぞれの宿場名から連想される戯曲や伝説に登場する人物を描きます。渓斎英泉と歌川広重による《木曽海道六拾九次之内》の成功を受けて制作されたシリーズですが、単なる風景画ではなく、武者絵を一番の得意分野とした国芳らしさが発揮された作品だといえるでしょう。
本図は大井宿の風景と芝居の有名な場面を取り上げた作品です。雨の中で破れ傘を差しながら手を伸ばしているのは、『仮名手本忠臣蔵』5段目に登場する斧定九郎。浪人に身を落とした定九郎は、百姓の与市兵衛を殺し金を奪います。ここには、今まさに定九郎が老人に声を掛け呼び止めようとする場面が描かれています。「大井」に、「おゝい、おゝい」という呼び声を掛けた言葉遊びです。