中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川広重 「名所江戸百景 浅草金龍山」

歌川広重「名所江戸百景 浅草金龍山」

#

歌川広重
「名所江戸百景 浅草金龍山」
大判錦絵 安政3年(1856)

作品解説

 広重が晩年得意とした、近接拡大の手法が効果的に用いられた作品です。画面上部には、金龍山浅草寺雷門の大提灯(ちょうちん)が描かれています。広重はあえてモティーフの全体を描かず、空間の広がりを感じさせる構図を取ることによって画面に奥行きをもたらし、臨場感を演出しています。参道やその先に建つ仁王門と五重塔は雪を被り、人々は傘を差しています。雪の白さと、門や提灯の色彩とが鮮やかな対比を成す画面が目を引きます。本図は、前年に発生した安政の大地震によって傾いた五重塔の修復に合わせて刊行したものと考えられています。また雪景色である本図ですが、7月に出版されたということが改印から分かります。江戸っ子は夏、目に涼しい雪輪模様の着物や手拭いを好んで身につけました。暑い盛りにはこのような絵を見て涼を取っていたのかもしれません。