中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川広重 「名所江戸百景 水道橋駿河台」

歌川広重「名所江戸百景 水道橋駿河台」

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歌川広重
「名所江戸百景 水道橋駿河台」
大判錦絵 安政4年(1857) T.C

作品解説

《名所江戸百景》は、広重の絶筆となった揃物です。近接拡大したモティーフを手前に描き極端なまでに遠近を強調する構図は、晩年の広重が多用したものです。
現在“子どもの日”として馴染み深い端午の節句ですが、庶民にも親しまれる行事として広まったのは江戸時代のこと。端午の節句は古代中国の行事に由来し、日本では厄払いの儀式と結びつき、中世に入って男児の成長を祝う節句として定着していきました。画中の遠景に見えるように、江戸の武家屋敷では五色の吹き流しや幟(のぼり)を立てました。その前面に鯉のぼりが、ひときわ大きく描かれています。町人の家では幟飾りを揚げることが禁じられていたため、代わって鯉のぼりが立てられるようになりました。鯉のぼりは5月の江戸の風物詩でした。富士山よりも高く、力強く天に上るこの作品の鯉の姿は、安政の大地震(1855年発生)の被害を受けた町の復興を象徴しているともいわれています。