中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川広重 「魚づくし 黒鯛小鯛に山椒」

歌川広重「魚づくし 黒鯛小鯛に山椒」

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歌川広重

「魚づくし 黒鯛小鯛に山椒」
大判錦絵 天保年間(1830-43) 初期T.C.


〽もちの夜に すなとる蜑(あま)が小鯛つる 影と大きく見ゆる黒鯛  富垣内安

〽うつくしき 小鯛に添し黒鯛は 黒木にさしゝ桜とや見む 越後川袋  花王菴芳志

作品解説

静物や花鳥画においても優品を遺した広重が、魚を描いた「魚づくし」というシリーズです。本図には2種類の鯛が、茗荷(みょうが)、山椒(さんしょう)と共に描かれています。魚の手触りまで伝える繊細な描写やモティーフの取り合わせからは、作者の観察眼の鋭さと、構成力の高さを伺い知ることができます。鯛には雲母(きら)を刷き、光る鱗(うろこ)の質感が見事に表現されます。写実性に富みながらも、涼やかな趣のある作品といえるでしょう。画中には2匹の鯛に着想を得て詠んだ、叙情的な狂歌が2首添えられています。