中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川広重 「東海道五拾三次 鞠子」 (狂歌入)

歌川広重「東海道五拾三次 鞠子」(狂歌入)

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歌川広重
「東海道五拾三次 鞠子」
(狂歌入) 中判錦絵
天保年間(1830-43) 後期


〽通りぬけするかごもありとまったり  神楽のきよくのまりこ宿とて


作品解説

広重は画業の中で東海道をテーマとした錦絵を数多く手掛けました。このシリーズは、東海道の宿場風景を描き、画中に狂歌(江戸時代に大流行した短歌形式の文学)を添えていることから「狂歌入東海道」と呼ばれています。本作は中判というやや小さな判型の紙を用い、柔らかな色彩で彩られており、精緻ながらも穏やかな印象を持ちます。
鞠子宿は東海道中で最も小さな宿場でした。店先では旅人が腰掛けて、とろろ汁をすすっています。とろろ汁は松尾芭蕉の俳句や、十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』の中にも登場し、鞠子名物として知られていました。店内の壁には白粉の広告や錦絵が貼られていますが、よく見ると広重の名所絵と見られる作品もあるようです。図に添えられた狂歌の中には「神楽のきよく(曲)のまりこ(鞠子)宿」とありますが、この地域一帯は現在に至るまで神楽が盛んで、それらは「駿河神楽」と総称されています。