中山道広重美術館 Hiroshige Museum of Art, Ena

歌川広重 「東海道五拾三次之内 庄野」 (保永堂版)

歌川広重「東海道五拾三次之内 庄野」(保永堂版)

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歌川広重
「東海道五拾三次之内 庄野」
(保永堂版) 大判錦絵
天保4年(1833) 頃

作品解説

広重の代表作《東海道五拾三次之内》の中でも、最もよく知られた作品のひとつでしょう。題名にある「白雨」とは俄雨(にわかあめ)のことです。暗い色調で、黒雲垂れ込める夏の夕暮れの情景が表されます。吹き荒れる風に木々も弓なりにたわみ、篠突(しのつ)く雨の中、蓑(みの)や笠(かさ)を被った人々が坂道を駆けて行く様が描かれます。広重は時の流れや季節の移ろい、人の動きを捉え、1枚の絵に収めることに長けた絵師でした。画面からは、黒風が樹木を揺さぶる音や雨声まで聞こえてきそうです。本図は庄野宿の手前を流れる鈴鹿川の沿道を描いたものと見られます。坂を下って行く人物の傘には「五十三次」、また版元を示す「竹のうち(=竹内)」という墨書が見えます。