歌川広重「伊勢名所二見か浦の図」
歌川広重
「伊勢名所二見か浦の図」
大判錦絵三枚続
弘化4~嘉永4年(1847-51) T.C
作品解説
名所や街道を扱った風景画でよく知られる広重ですが、美人画も制作しています。こちらは三枚続による横長の画面を生かし、伊勢二見ヶ浦の眺めを背景に、6人の女性の全身像を収めています。杖を携え、旅装束に身を包んだ彼女たちは、伊勢参りに向かいます。江戸時代、伊勢は一生に一度は訪れたいと願う憧れの地でした。特に60年毎に巡ってくる記念の年には、「お蔭参り」という集団参詣がブームとなりました。画中に見られるように、長い道のりを歩くため当時の女性は着物の裾を紐()で上げ、脚には脛(すね)当てを付けていました。現在も元旦に初日の出を拝む人々でにぎわいを見せる二見ヶ浦は、古来伊勢神宮ゆかりの名勝とされ、参詣者はここで身を清める習わしがありました。